真鍮の止まり木

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詩(2020年3月8日)

「近い、青い」


肉体を通る、春風の鋭さ。いつの間にか、昔の君を思い出していた。
二人、霧に解けて、道連れは無しにしようよと約束した。
ここは涼しいから、忘れてしまう。秋のことも冬のことも。
たまに話し掛けて。
行き先を気にかけておどおどするのは悲しいだけだから。
君の唇に落とされた皺の模様がうつくしい。
俺が刻んだんだと吐露できたら良いのに。
さまざまな憤りがある。
二人分の視線が向かう先、春燈に照らされ、ぷかぷかと浮かんでいる。
ここが現世、俺と君の足元。