真鍮の止まり木

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創作BL「春風懇望」

寝覚めの不確かさ

目覚めたら正午で、ああ寝過ごしたのだなと自覚した。枕元にある、最新バージョンから幾分遅れた携帯には、三件の不在着信が届けられていた。宛先はどれも同一人物からであった。 「菊人さん」 自らの能動的性欲のおおよそ全てが向かう対象を指して、聖也は…

先生僕を*してくれ

僕にとってのささやかな「祈り」とは、先生の自室で毎朝目覚めることであった。古書の匂いに満ちた先生の寝具に身を沈め、安心の中で守られているのだと実感できるとき、確かに僕は生きているのだと知った。 生きている、それゆえ私は此処に居てもいい。何の…

人類を、あるいは世界の白を信じさせてくれ

神山季雄という男。 神山季雄という男を知ってくれないか。私が、生涯かけて信奉すると誓った男の名前を、どうか記憶に刻んでいってくれないか。 彼は「善良」が形を持って顕現した存在だ。 彼の柔らかい髪が春を待つ寒風に揺れるとき、彼の人柄のように心地…